田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
生々しさや煩わしさや、シャンプーにまつわる様々な雑多な実体験を呼び起こします。それに対して、「小鳥」という言葉のなんという抽象性。どんな特定の小鳥とも結びつかないゆえに、対象の生の雑多なあり方を詩の中に持ち込まず、ただ観念的に小鳥の抽象的で普遍的な性質を指し示すのみです。初期の田村の詩には、このような抽象的で観念的で、音楽を構成できる楽音に対応するような単語が好んで用いられているのです。だから、まず、構成要素の次元で、田村の詩語は、楽音に対応し、そもそも音楽を可能にします。
次に定型の問題。「見よ、/四千の日と夜の空から/一羽の小鳥のふるえる舌がほしいばかりに、/四千の夜と四千の日の逆光線を/
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