一人でハチ公前/番田 
 

僕は何も知らないという事実だけが
僕には 理解できる事実なのかも知れなかった
早朝の街のビルの影をたどっていく
遠い過去の自分の姿だけがやけにはっきりとしていた
それは 一体 なぜだろう
渋谷のスクランブル交差点を空虚な顔をした服たちが行き交う
思いを分かち合える人などどこにもいないようだった
君はいつもの鋼のような表情をしてどこに行く
恋人や金は君の心を満たすのだろうか
わからないけれど 僕は 行く場所がない


ツタヤの隅っこにあったアダルトDVDを持って行くと
女性店員は 泣きそうな顔をして こちらを見ていた
僕にとっては全く何でもない話しだけれど
思い出すと 暇なので 僕は笑いそうになってしまった


しかし誘惑を感じる店自体がなくなった
読みたい雑誌も見あたらない
人間なんて本当は空虚な生き物だ
ネットの世界がそれを解き明かしてくれた


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