忘れられた女 いち/かなりや
 
せんせいあのね

 きのうのわたしのいえのばんごはんは、ビーフシチューでした。
このよでいちばんあわれな女はわすれられた女だそうです。
うちのおかあさんは、ビーフシチューを作りながらそんなうたばかりうたいます。そして、
「だからおかあさんはわすれられないようにするの。」
と言いました。
「だからあなたもわすれられちゃいけないのよ。」
と言いました。
わたしは、
「わたしもおとうさんも、おかあさんのことわすれないから心ぱいしないで。」
と言いました。
そうしたらおかあさんは
「そうね。ありがとう。」
とやさしく言いました。
わたしはわすれられない女になってはいけないとおもうので、ならないようにしたいです。

戻る   Point(1)