M 2012/たま
 


すこし太った と
しわだらけのあなたが言う

たしかに 
しわの数はへっていないけれど
わずかに 浅くはなっている
一年ぶりに 団地にUターンしたのが良かったのか
また 
独居老人になってしまったけれど

十九で双子の姉を
二十一でこのわたしを 産みおとし
二十八で夫を亡くし
それから 
ひとりで生きてきた
がまんを転がすようにして育てた息子は
ことし 五十才


年末の寒波が身にこたえたのか
ひとり暮らしの部屋はさむい と
めずらしく弱音をこぼした

あなたがいま 一緒に暮らしたいひとは
娘でもなく
息子でもなく
さきに逝ってしまった父
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