紙の家/yo-yo
初潮ということばが
海のことばみたいなのはなぜかしら
などと考えていた頃に
おまえの家は紙の家だとからかわれ
わたしは学校へ行けなくなった
わたしは紙のにおいが好きだった
ノートのにおいとか
鼻をかむ時のティッシュのにおい
障子や襖のにおい
紙でできた家があったらすてき
そんなことを文集に書いたことがある
けれども紙の家は
雨にも風にもよわい家でした
とても壊れやすい家でした
紙の家の
壁に穴をあけて
弟もとうとう家出した
あんなに威張っていたけれど
穴は小さくてかわいいぬけ殻みたい
その穴のむこうに
なにが見えていたんだろうか
台所の壁に
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