生きる証/salco
 
舌を切られた者はともかく
一度口に放り込まれたら
二度とキャンディーの味は忘れられない
どんな果実よりそれは甘く
どんな甘味より刺激が強く
思うだに唾液が溢れ
食べ続けても満腹感は決して来ない
例えば愛とはそんなもの
虫歯予防は根気が第一

かつて我々はサバンナに暮らす
歯磨きも靴磨きも要らぬ
素朴で謙虚な裸族の子ら
無心で無垢な未開人の子らのようだった
貧しい親の精一杯の供与に充足していた
しばしば空飛ぶ夢は見ていたものの

そしてある日
異教徒の毛むくじゃらな指先から
口の中へ転がり込んだ宝石の味を知る
宣教師の熱意が
あるいは無用の節介が
土人の子
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