グリニッジビレッジからの道/番田 
 

思い出されるのはかつて見た物や、手に入れた物。僕は、誰だろうと思った。休み時間になると、ぼんやりと過去の風景を思い浮かべる。僕はいつでも、子供の頃の世界に戻れた。進学塾の重いドアを開けて、中に入る。毎日のようにまぶしい蛍光灯の光に照らされていたこと。そして、車の中。父の運転する車の後部座席で高速道路の光を見ていた。地元を走っている、小さな電車の色のこと。僕は思い出を作るために海外旅行に出かけたものだった。例えば、マンハッタンの地下鉄には何度も乗った。パリの夜道をぼんやりと歩いた。そうしては、違う世界の中を生きる人たちの物語を見つめていた。

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