未季明/木立 悟
陽のかたまりが
荒れ地の斜面を流れ落ちる
何もない場所が
何もない拍手に華やいでゆく
指に沈む 爪の長さ
雪でできた肉厚の葉に
花は無い 花は無い
多重の夢の終わり得ぬまま
どこにも着かず離れぬ原の
ひとつの穂だけが揺れる風波
蜘蛛の巣と涙と
イーゼルの森を越えると
蒼い道が現われ
光が光を 水が水をわたりゆく
黒へ黒へそびえる緑
径を呑み 夜を呑み
なお暗くなお渇きまたたいている
息のとなりの
もうひとつの息
夢を鎮めに寄り添うもの
尖った曇の迷いを見送る
鏡のふりした鏡にも
音を映す
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