光が煙のように立ちこめていた/ただのみきや
 
おれは殺風景
 がらんどうで埃濛々


 だから昼の檻に閉じ込められた
オオミズアオなんか見つけると
こんな錆びついた工具のような手をしながら
そっと 捕まえてみたくもなるものさ


 薄暗がりに咲く鉄線の紫
震えるように飛翔する妖精の姿
ほんの少しだけ関わってみたくなったのさ
すれ違ってばかりだった綺麗なものたちと


おれは不器用な殺し屋
 マントに包まれた茫漠だ


 だからこの手の中で綺麗がもがく
青い鱗粉が剥がれ落ちて行く
白い躰が崩れ落ちて行く
あぶら汗のような時間がいのちをむしり取って行く


 三面鏡の奥の奥
泣き出す寸前の子供の顔の奇妙な歪みと裏腹に
浸食された岩のような顔なしの動作が
無言で手放す 陽が射し貫く石の海へ


おれは目を持ってしまった欲望
 鍵の壊れた孤独
  逃げ水を湛えた
   焼けたアスファルト

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