雨音/takano
眼を瞑ると何が見える
瞼越しにLED照明の残像が
やや遅れて
大脳葉で知覚される
残像はしばらく漂い、すぼんで消えたあとは
赤黒い闇のスクリーンに
何かを見ようとしても
心のなかで 念じる何かの
イメージはけしてやってこない
ときに レンズについた
ミジンコのような微生物が
横切っていく
ミジンコを追いかけて
見ているとそのうしろに
何やら人影が見え始める
それは予期しない
既知との遭遇だったりもする
(のだが ・・・・・・ )
睡魔が襲う
(幻野が降りてくる)
土蔵の塗り壁がみえる
酸化してくぐもった象牙色の
歪な勾玉の芽が生えている
洞穴は暗く 獣の匂いで窒息する
(肉体は朦朧につかれ)
たちゆかない追憶の呪縛から解かれると
梅雨のしなだれた雨音が
換気口の向こうから
聞こえてくる
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