アラスカ/智鶴
朧な碧い部屋で
私、夢を見ていたのね
溜息一つ、デキャンタと冷めた灰皿
白いレースで覆い隠されて
私の全てが嘘みたい
スローでムーディな音楽を
誰と聞いていたかしら?
花の名前のグラスを手にして
私は誰と話していたかしら?
冷たいカウンターの感触を
ただ掌で感じていただけ
重なっていたのは
私と私の幻
向かい合った鏡の裏を覗いて
其処にいたのは透明な体温
見つからないのは
私と貴方の期待と
グラスの重なり合う瞬間
貴方は私の温かな偶像
そして鮮やかな残像
砂漠に満たした碧色を掬いあげて
忘れてしまう前に喉に流した
滑らかな紅は全て
碧い貴方のせいにして
もう一度溶け込んでしまおうかしら
砂漠に転々と残したアラスカで
貴方の行方も辿れるかしら
甘く曇った世界は狭いから
ねぇ。
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