巨大なおもちゃ箱の中で/komasen333
 
「視界不良」の電光表示を無視して
向う男たちの背中に 
思わず探してしまう 亡き父の面影

崩れていく 
秒針を振り切るような速度で
表情も、色彩も、形状も 
このジオラマの一部であったかのように
そもそも始めから 
このドラマのために
用意されていたかのように

昨日
なんの見返りもなく助けてくれた人々が
今日
口実らしい口実も持たぬまま抜け駆けに

昨日
なんの見返りもなく掬ってくれた統治が
今日
大義らしい大儀も持たぬまま切捨てに

信じられる対象が悉くなくなっていく 
麻酔の一つも 打つことさえ許されず 
手術台への列へと引き摺られる 

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