水族/
salco
重力を離れながら
バレエの躍動ともほど遠い
水中は人の棲息域でなく
宇宙空間ほどの自由も許さない
ボンベを背負っていようが
この密度に勝れる筋力さえない
と知らしめて
終演後
鼻息の荒い婆さんが出て来て
水中バレエの歴史と創立者の自負をぶった
滔々、延々と
今月だか今年だかで幕を下ろすという
やるかたない憤懣を
乏しい客にぶつけるのだった
むべなるかな
観客に窒息感と憐憫を惹起するだけの
実に場末な見世物だった
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