sailing/Akari Chika
 
夜がすき
たまらなく
夜のにおいが

透きとおる風の底から
夜更けの窓が見える、
わたしを呑みこむ
星屑の泡が立つ
深海の窓

ありふれた街で息をする、
そのことがたまらなく愛おしい

灯りに埋もれる勇気はないけど飛べる気がする
浮気な痛み
満ちる気のない月
夜空に散らばる
果てしない数列。
彗星は離れ 離れのふたりを結ぶイコール

なみだを飲んだら
わたしは強くなる

高層ビルの箱舟に
身体がはんぶん溶け込んで
櫂を握る手は空っぽの部屋
錨を上げる制服のガードマン

あなたの肩に頬が触れたとき
あなたは少し困った顔をした。
今もその顔が
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