歌う人/竜門勇気
 
口笛を吹くように自然に
言葉が流れる
僕はそういうふうに
歌う人になりたい

だけど
思いってやつは
トゲトゲして不恰好で
喉につかえてしまうから
僕が歌う様は
血反吐を吐く犬のように見えるそうだ
道端でのたうつ
野良犬のように見えるそうだ

新しい毎日は
新鮮なだけで苦しい
薄い空気の中
喘ぎながら登る坂道だ

喜びはきっと
その合間に見える幻想
光は瞬いて消える

心にあるものは
脳にあるもの
限られたサイズで
決められた形で
そして必要なほど大きくはないから
いつも不吉に張り詰めてる
僕には歌が必要だ

水が低いところへ動くみたい
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