日本橋のイタリアンレストランで / 2012.05.27/beebee
 





何もないが降った日に


季節はもう初夏だと言うのに
空から何もないが降ってきた
何もないは初夏の街並みを埋めてしまって
僕は降り積もった何もないの上を
ポツリポツリと足跡を残しながら
歩き回った

都心の街並みには
鮮やかな木漏れ日が零れて
其処此処に光の水溜りがあって
僕は足を取られないように
注意しながら歩いていたけれど
何もないが原色の世界を
白黒に変えて行く

だから街角には色とりどりの
季節の薔薇が咲き誇っていたが
手で何もないを振り払っていないと
それは過去に見た思い出のように
僕を
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