饒舌する不在(それが伝言板ならどんな言葉も読み取れることはない)/ホロウ・シカエルボク
 




うそつきな服を着た少女たちがすべってゆく表通り
中華料理店の裏口の窓に三度高く上がった炎
路面電車の停車音が精神異常者の断末魔の叫びを中和するダイヤグラム
ボサノバ気取ったニュー・ポップスの流れるアウトレットモール
起動を拒否し始めたノートパソコンのファンの回転音
カーペットの隅で群れて革命を企てているような飼猫の体毛
空家のポストの前で叶わなかった欲望のようなアダルトブースの広告
動画共有サイトで何度も再生されるマドモアゼルが吹きだすシナモン
かかるかどうか判らない電話を待ち続けている求職中の男の目つき
かすかに曇る空を見上げて洗濯を取り込むかどうか迷う若い専業
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