離れ そのまま/木立 悟
 




硝子と硝子のはざまの花
花の息に
そよぐ花
花は
花ではないのかもしれない



祭の終わりに
終わりを見ぬまま離れ出て
裏の通りを歩いていた
海に並び
海に着かぬ道


遠のくばかり
指は指に
波は波に重なるばかり
次々に
指でも波でもなくなるばかり


泡のなかの目
泡の鳥
砂浜に立つ透明に
一瞬隠れ
また現われる


暗い深みどりの径を
四つ足の背がすぎてゆく
鈍と銀に溶けながら
坂のひとつを下りながら


火口湖の辺
空の白ばかりあふれあふれて
受け取ったものを返せずに
水はいつまでも朝の色でいる
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