裏庭/小川 葉
裏庭に大都会
スクランブルされた
スクランブル交差点
虫が自由に行き来してる
信号は守らない
みな生きる意志を守りながら
なにひとつ守らずに
なにかを大切そうに運んでる
生き物が生き物の死骸を
またはそれに対価する価値を
小さな胸に抱き
あるいは背中に背負いながら
裏庭の大都会を形成していく
発展しすぎた大都会
ふと草刈りしなければ
と言った
家主を蛍が制止する
明滅する大都会
立ち並んだ雑草のビル
美しすぎる夜の裏庭
家主は神のように
縁側で裏庭を眺めている
どこかから聞こえる
蛙の声を聞くと
明日は雨だと思う
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