ヒキナギ乞う唄/砂木
 

一羽でカラス二羽を威嚇した強さにか
なんとなく情がうつったのか

最後に見た雪の降る数日前
ナギは 大きくなって見えた
冬に備えて たくさん食べたのかな ナギ
車庫から車をだして出勤する私の横を飛び
部落のはずれの木に止まり お別れしたね

チチチッ と口真似しては
空を見るけど あなたはいない
いないのはわかっているけど
私もいつまでもいるわけでもないし
いないのではない 
ナギは私といるしかない
なぜなら ナギだから

名のもとに現れるあなたはもうただの鳥ではない
あなたか私か もう区別できない
ナギが今度は人間で 私が ただの風でも

チチチッ ささやいて
風に微笑んで

オカエリナサイ




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