想い出/takano
 
それは じき春という

ある季節の架橋

冬籠もりしていた娘が

不憫で

散歩に連れ出したときの

出来事

よちよち歩きの赤い半纏

が ふらふらふらふら

ジグザグダンスを踊る

まだ肌寒い疾風を

林檎のほっぺに受けてなお

途方ない神社の階段を

手をひかれながら

登っていくさまは

命の発露

笑顔が絶えない

生命の喜び

忘れられない一コマ

上がりきったところで

娘は立ち尽くす

境内には一組の親子の姿があった

娘はじっと見つめている

娘の手をとろうとした

その瞬間

嬉々として走りだし

二つの生命は遭遇した

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