想い出/takano
それは じき春という
ある季節の架橋
冬籠もりしていた娘が
不憫で
散歩に連れ出したときの
出来事
よちよち歩きの赤い半纏
が ふらふらふらふら
ジグザグダンスを踊る
まだ肌寒い疾風を
林檎のほっぺに受けてなお
途方ない神社の階段を
手をひかれながら
登っていくさまは
命の発露
笑顔が絶えない
生命の喜び
忘れられない一コマ
上がりきったところで
娘は立ち尽くす
境内には一組の親子の姿があった
娘はじっと見つめている
娘の手をとろうとした
その瞬間
嬉々として走りだし
二つの生命は遭遇した
戻る 編 削 Point(1)