洞へ 夜へ/木立 悟
 




光が
空の壁を抜け
消えてゆく
遠い笑みの 細い柱


石の路の夕べの先
午後が雷を呑んだあと
あたりは暑く静かになり
失くしたものを数えだす


進む方へ 傾く夜
小さなものらが縁どる水
まばゆさ ついてくる
まばゆさ


涸れ川をゆく影
崖の上の木
砂色の陽
見上げる曇


穴のあいたものどうしが
こぼれる景色を拾いあう
さまざまな記憶が
重なり浮かぶ


誰かのための左目があり
震える夜を映している
棘 針 刻み
曇のなかを たどりつく駒


首の落ちない花を望み
庭のすべてを塗りかえて
空の指の穴 
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