霧を食む/霙小町
 

 悲しみを食べて
 生きていけたらいいのに
 そうしてあなたを
 からっぽにしてあげるのだ

 あなたの悲しみを食べたいのです
 もう泣かなくていいように
 もう しんでしまってもいいように
 そうだ、あなたの左腕をください
 そんなものがあるから
 いけないのです

 悲しみなど
 霧のようなものなのだ
 あなたを取り巻き
 静かに狂わす
 ああ あなたの周りを
 照らす力が僕にあったなら

 そんな煩わしいものは
 捨てておしまいなさい
 痛みを知るための腕など
 なくてもいいのだ

 僕があなたの悲しみを
 食べてしまえたらいいのに


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