赤い夜/takano
 
今夜も 眠れないらしい

羊を999匹数えたところで

口元が 音を吐き出し始めた

意味を手繰りようのない

音の連鎖に過ぎない

ときおり 息を吸う音が

人の発する声であることを

思い出させる

呼吸のたびに

感情のような音の高低が助長され

さらに 興奮へと

彼女を導いていく

止む気配はない

疲れからか ときおり

一呼吸の間が長くなるのが

寸暇の安堵を与える

果てしない 自動記述かの

ごとくも

すでに 予定された想念の

全体を吐ききるまで

つづくように おもえた

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