私/永乃ゆち
 
ぶならそうかもしれないが
情熱や憧れと言ってしまえばそれまでの事

あの人に詩を贈ろうかと思い書いてみたら
それは脅迫になってしまう事に気付いた


何を基準にして良いのか分からないが
私は人を愛せないのだと思う

愛された事がないから

最初の優しい記憶は色褪せた写真の中にあって
それはまるで他人の写真を眺めているかのような
遠い眩暈すら感じる

愛されたいとは思わない
愛がどんなものか知らないから
私を押し潰し崩壊させてしまう物のような気がする
私はそれが怖い


私は優しくなくて良い
私は愛を知らずにいて良い
私は真っ暗な中ぽつんと一人立ち止まっていれば良い


いつか誰かを愛した時
いつか誰かに愛された時
自分が壊れてしまうんじゃないかと思う


私は私のままで良い
優しい人たちを遠巻きに見て
きらきらとした煌めきに目を伏せながら
独りうなだれているのが
お似合いなのだ
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