遠雷のした/月乃助
遠雷のひびき
それは、叫び声にも似た、
雨 雨 雨 雨 雨 雨 雨 雨雨雨
ぐっしょりと 濡れそぼり
沢へつづく 林道をす」すむ
すでに谷あいの道は、土砂に閉ざされ
人は通ることをあきらめた
不安定な瓦礫の上に佇み
振り返ると 人里が霧靄の中にしずんでいる
少しのあいだ それを見つめる
谷からの風に異臭がした
頭ではなく 体が反応し逃げ出す
岩陰から突然にあらわれた黒い影に
私は、理不尽な激痛に投げ出され 私をうしなう
時をまたず、
体は、岩の上に打ち付けられた
獣の臭い
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