桜並木/永乃ゆち
 
う囁いた


あぁ、そうか


私の歩かなければならないこの道は
二度とは引き返せない道だったのだ


風の強い日

桜の枝が揺れて花弁たちが別れを告げる時

私も自己と言う到底理解しえなかった生き物と
別れを告げたのだ


後悔はない
こんなに美しい桜を見る事が出来たのだから

最初で最後の優しい景色を
この瞳に焼き付ける事が出来たのだから


歩いて行こう

長い長い桜並木を

振り返らずゆこう

いつか立ち止まり

花弁に埋もれて

肉が腐り

骨が朽ち

転がる虚ろな瞳が

流れる桜を永久(とわ)に映すように
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