桜並木/永乃ゆち
遠くを見ると、果てしなく感じて目を閉じた
足元を見ると、崩れ落ちてゆきそうで怖くなった
さようなら
桜の枝が揺れて花弁が零れる時
そんな言葉を耳にする
さようなら
さようなら
何百という花弁たちが別れの言葉を告げながら
アスファルトに屋根に屋上にあるいは川面に潔く散ってゆく
私は此処から動けないまま
何処かへ行きたいわけじゃない
けれど此処に居たいわけじゃない
桜並木という物は、入口に立つだけで目が眩んで
日本でも地球でもない何処かへ連れて行かれそうだ
冥府
唇に柔らかく触れた花弁がそう囁
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