ゆうべ見た月、ぬれた月/かなりや
ゆうべ見た月
しなやかに
わたしの体を駆けてゆく
ころんでもいい
すりむいてもいい
ただただ
間に合わないのだけはまっぴらよ、って
ひとりごとを言いながら
もしかしたら
ひとりごとではなかったのかもしれないけれど
わたしが聞こえぬふりをして
みんながお口をチャックすりゃ
ほうら
たちまちひとりごと
ゆうべ見た月
しめっぽく
わたしの体を這ってゆく
きたなくてもいい
わらわれたっていい
ただただ
さみしすぎるのはまっぴらよ、って
ひとりごとを言いながら
通り過ぎるだけ
わたしの体を
すこしぬらしながら
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