転がる石/HAL
 
ぼくは昔 転がる石だった
ぼくを握った手の熱さを
ぼくを投げたその手の強さも
まだ忘れていない

でもいまのぼくはただの石だ
転がった所にただいるだけの
単なる石になってしまった

もちろんぼくだけじゃない
多くの石はただ道にいるだけ
邪魔だと蹴る奴もいるけれど

昔のぼくはそんな奴に向かって
投げられるための石だった
怖がらせるための石だった

そいつらの顔面を直撃したときは
遁走する背中に向かって飛んでいくのは
命中すればその快感はより強くなったよ

同胞には火炎瓶もいたし
角棒も鉄パイプもいたし

でもどうしてだろう
ぼくは熱い手で握られ

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