海岸線との境目には/岸かの子
 
白砂と
小さな世界が待っている
柔らかな海水が裸足の親指に触れる度に
小さな世界へと渦を巻いて引き込まれる
何度も何度も 行きては還り
還れば 行くの繰り返しを
日毎に重ねて そしてまどろむ
足先の冷めたさだけの感覚がかろうじて
私だけを形骸化するモノになり
そこだけは女だと自覚する
小さな世界へ逆さに落ち
闇の国から誰かを待っていた

死に絶えたのか
未だ私に 未練という
しつこい冗談に付き合っているのか

生き急いだツケなのか

死こそ 私の魂の縫い目なのだ
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