遺言劇/永乃ゆち
筋の涙も出ない
私の心は冷静で乾いている
涙は枯渇したようだ
猫が鳴いている
甘ったるい声で愛する伴侶を求めて
私はとうとう見つけられなかった
最初で最後愛した男は私を女と見なかった
気持ちを打ち明けても
「どんな気持ちも持ってて良いよ」
とだけ言った
なんて無責任
当てのない恋心を持ち続けるのに何の意味があるのか
私はそんなに強くない
失恋したから自殺しようだなんて思ったわけじゃない
もう何年も前から計画していた
私は地球には合わなかったのだ
どこか他の惑星にでも生まれていれば良かったんじゃないか
あぁ、急がなければ
夜明けがすぐそこまでやって来てる
私の一番嫌いな夜明けが
やっぱり農薬は私だけが飲もう
知らない男とは言え道ずれはかわいそうだ
これで良い
これで良かったんだ
朝日が昇る頃にはすべてが終わってる
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