ノート(午下)/木立 悟
 



風の端が低くたなびき
路をわずかに持ち上げるとき
踏切の音は空に揺らいで
近づく雨を測っている



原のざわめきの半分は
壁のむこう
路のむこうに隠れていて
水たまりの白さを数え終えては
どこかへまっすぐ駆けてゆく



しゃがんでいた子が立ちあがり
水と銀を呼んでいる
灰はぎごちなくせわしなく
路を照らし 路を鳴らし
冷ややかな煙は動き少なに
ひとときの声を聴いている



雨はそろりと行ってしまう
高いところを梳いてしまう
原と路のわだかまりには
さまざまな鳥が群れていて
草の色を吹いている



鈴がふるいにかけられて
水の斜面を落ちてゆく
受けとめる歌
口にふくむ歌
今は通るもののない
草の路 
鉄の路を流れてゆく







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