彼女/梅昆布茶
 
かろやかな韻を踏んで彼女はやって来る
きせつのすべてを引き連れて
草原や潅木の露をあつめたりミツバチたちと
あかしやのはちみつをつくるんだとか

神殿の壁はまだひんやりとして小さな蛇がやすんでいた
旅芸人は眠りから覚めあさげのしたくをはじめる

そのやさしげな髪はなだらかにうねり
ちいさな後悔を日の光でとかしてくれる
動物たちは水辺であさの喉をうるおし
よるの魔物は地の底でやすむ

そうこんな時間には
福音はだれのものでもない
やさしいことばだとおもえるんだね

きょうという日はぼくらのために
ささやかな驚きを用意してくれている
そんな予感に満ちあふれたたゆとう時間のなかに
ふんわりとうかんでてもいいんじゃないかな

まるで一日のはじまりに
やさしく髪をなでられているみたいに
なみなみと注がれたミルクを飲み干すように
ひかりで満たされるのさ

そうこんな彼女がまた
くりかえしやってくるなんて
すてきなことだよね

そうおもわないかい




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