世紀末の記録/takano
それは
世紀末のとある
アジアの国でのこと
とある家族が崩壊した
父であった少年は
母であった少女を
車の後部座席に横たえ
深夜の国道を走っていた
少年は夜明け前までに
故郷に少女を送り届けるため
アクセルを踏み続けた
横たわっていた少女は
なにやら呪文のような
鎖状の言葉を吐き続けた
少年に言葉を返す暇を
与えないかのように
吐き続けた
少年は耳を塞ぐことも叶わず
ぐるぐると吃音めいた言葉の鎖に
がんじがらめに縛られていった
急カーブを減速することもできず
深夜の闇の中を疾走した
すべては赤子のために
何も知らず すやすやと
家で眠る我が子のために
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