ふたつの出会い/八男(はちおとこ)
学生時代、福祉系の大学に行っていた友人に誘われて、藤の根作業所(現いぶきやま・当時建物は旧山東町に在しました)にボランティアに行きました。昔、私の母親がしていた内職のような単純作業だったと思いますが、まだ若く集中力が足りなかった私は丸一日だった予定を切り上げ、友人を置き去りにして午前中で逃げ出しました。その昼休みに当時の所長さんとキャッチボールをしました。緩やかなボールの軌道を眺めながら将来どうするんだろうといった話をしていたのを覚えています。所長さんからの一球一球から、何か予感めいたものが蓄積されていき、あの時間で一つの人生が決まっていった気がします。あのキャッチボールがなかったら、今、私はこの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)