難破する図書館/るるりら
 
チリアの恋人の 叔父にあたる人が言うには
人間とはギリシア語で「死すべきもの」だともいうらしい
と いうことは たまに 死なないのが人間?なのかもしれない

愛するものたちの不思議は おおけば おおいほどいい
航海は いつも人間であることの意味を知らないまま 
けれど それは
プランクトンのように 
図書館の床のひんやりにも 潜んでいる

プラトンの偉大さのようにインクの匂いは 死んだままで
そのくせ生きたままのことばで わたしに打ち寄せる
つい うっかり古い潮の匂いのする鯨が私を呑み込む
呑み込まれる勇気もなく 図書館から逃げ延びる

帰り道
天を仰ぐ
「お前は にんげんだぞ」という声を聴こうとして



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