「苺畑の悪魔」/桐ヶ谷忍
 
黒い悪魔が苺畑で赤く熟れた苺を踏み潰して笑っている。
奇怪な甲高い笑い声を発しながら、楽しげに踏み潰している。
それはいっそ無邪気にさえ見えるほどに。
いかにも甘そうな艶やかな赤色の苺を踏み潰す事を楽しんでいる
かのように見せかけて、実は違う。
いや、誰もが欲しがるような苺を踏み潰す事に楽しみを
見出しているのもまた事実だろうが、隠された側面には
こんな意味がある。
「どうだ、この苺が欲しいか? だがこの甘い甘い苺でさえも
こんなにも易々と踏み潰せるだけの、もっともっととろける甘いモノを
俺はお前に与えてやれるだけの力があるぜ?」

代償を払うのはいつだって、誰一人として、
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