キズという名の獣/水町綜助
どうしても舐められない背中に
傷がある
猫がひとつ
街の中に座ってた
首もとまで
コートを閉めて
冷えきった青
ブルーとは、
本来冷たい色なのだと
冬の終わるいま
あいまいな人は思い
首を
回して
舐めようとしているが
どうしても届かない姿に
少し強さを増してきた日射しが
まだその猫の毛の白い部分を
緑色に目に焼き付くほど
光らせているのを
目を閉じて
焼き付いた像を
その粒子を一粒ずつ
かき集めて
自分の中に埋めようとしている
猫は背を向けて
何かを追うように
宙をあおぎ
傷あとが見えるが
手の届く距離ではなく
コート
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