無境音叉/木立 悟
朝の冠
光なぞる指
覆い
覆いて
凶事とともに
庭に埋まり
花露の熱
打ち寄せる音
寒い光の底から出て
雑な緑を集めている
昼の明るさ
何も無さ
ひとつひとつ
異なる声が降りつもる
かつて
街だった場所
水の上の蒼
氷の蒼
芽の上の空
葉を分ける指
音は起き
径を曲がり
野に沈む川へ
歩いてゆく
雨の光
遠い手まねき
難しくもなく
鳥でもなく
さやさやと渡り
おくりものを失くし
陽射しをたたみ
野の前に置き
枝をゆく水
手のひらひとつ さえずりを止め
影に落ちる影
ゆうるり動いて
河口また河口
風が帯びる火
何が照らされ 照らされぬのか
光は語らず 門に背を向ける
次の冬まで横たわる冬
川底は近く遠くなる
雨を持ち上げる雨の色
海と海をつないでゆく
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