子守唄/永乃ゆち
やさしい歌を歌いたかった
誰も歌ってくれなかったから
野ネズミが騒がしく街を出てゆく
荒廃と言う名がふさわしい場所
私は鎖に繋がれたまままた眼を閉じる
夢を
見る
太陽が地球に接近してきて
総ての有機体は呑み込まれ死滅する
野ネズミの行方は分からない
やさしい歌が聴きたかった
私の喉は潰されていて
歌など歌えないのだ
鎖に繋がれた足は擦れて血が滲んでいる
私をここに独り置き去りにして
母と言う名の女はどこへ行ったのか
野ネズミの方が詳しいかもしれない
太陽が近付いてくる
もうじき世界が終わる
私は声にならない声で歌う
小さい頃に聴いた
母の子守唄を
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