白衣の人/ベンジャミン
 
か、仕事の合間を見ていつもお見舞いに来てくれました。その人はあまり多くを語りませんでしたが、表情からは「困ったなぁ」というのが感じ取れました。僕はそれを見てすまなく思ったのですが、それでもやっぱり早く帰ることばかり考えていました。

そんなある日、もう何度目になるのか分からない入院になりました。何となく気配がしたので病室の入り口を見ると、いつから立っていたのか、その人は入り口の壁に寄りかかってこちらを見ていました。ちょうど夕暮れ時で室内はほんのりあかみをおびていて、そのせいか、その人の表情は少し悲しそうに見えました。いつもは立ったまま話すのに、その日はなぜかベットわきの椅子に座ると、少し笑顔を
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