黄昏、憂鬱/シンバ
 
夕暮れの電車は 地獄そのものである

真っ赤な夕日をさんさん浴びて

老いも若きも 疲れ切った能面を 血糊で真っ赤に染めている


学生達が大声で憂さ晴らし

卸したてのスーツを着た若者達が 見知らぬ誰かを大声で馬鹿にする

優先座席を追われた年寄りが 黙して彼らを覗き見る


車内には 美しい言葉で溢れている

焼き増しされたポップスのような そらぞらしい言葉が

価値観やら正義感やらを 舌を滑らかにするだけの 潤滑油にまで貶めた

あげく駈け引きの道具となりはてた むなしいむなしい奇声が



たった二駅だったが 僕にとっては地獄であった

誰か窓を開けてくれないか

そう切に願ってしまった

連れ合いが一駅で降りたのは わずかな救いであった


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