吉本隆明『芸術言語論』概説/石川敬大
もの、という意味なのか。それとも表出(表現)者にとっての内面・精神性のことを指すのか。その概念がよく理解できなかった。第二章の『精神と表現の型』はさらに難解であった。具体的に森鴎外、夏目漱石の作品を例に「芸術言語はきわめて明瞭に宿命を指さす」と結語するのだが、作品、言葉に表された芸術言語、(作者の)生来の精神構造をつなぎあわせたときにそれは表われると言い、「文芸批評という領域がありうるとするならば、作品と作家の関係、言語と作者の精神関係とが強い糸で結ばれていると明瞭にできれば、そこ(結語)までゆく」とし、その方法論こそ「普遍的な(あらゆる)芸術の言葉に適合できる」と敷衍する。吉本のこのような類推す
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