燻製/HAL
 
ある用事があって久しぶりに
母校の大学の図書館を訪れた帰り坂

どこかから何かを燻らしている様な
芳しいとも苦っぽいとも想える

懐かしいような想い出したくない様な
薫りが否応もなくぼくを包みはじめた

それだけで少しずつ遥かな記憶の
フラッシュバックにぼくは襲われた

その光の強い点滅の中でぼくは気づいた
この匂いはこのいがらっぽい煙は

ぼくらが世界を変える変えられると
信じ疑わなかった騒乱の時代に抱いた

ぼくの青臭い熱情がまだ燻っている
紛れもないぼくの熱い想いの匂いだった
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