おかしな人/岡部淳太郎
思われ
指をさされて生きるのは
当たり前のことになっているのに
なにをいまさら
気にする必要があるのか
それでも眠れない夜に
呼吸以外の気体を吸いこみ
吐きだすことができないのは淋しいから
覚悟を決めて外に出る
深夜の自動販売機は煌々とあかりがともり
まるで他人のような雰囲気だ
それもまた
たまらなくおかしなことだ
やっと煙草を買って
何とか質問されずに済んだなと思い
空を見上げる
そういえばいまもこの空を
あいつらの燃えて塵となった
身体が漂っているのかもしれないのだなと思って
ためいきをつく
俺がこんなにも
おかしくなっちまったのは
俺を置いて死んで
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