蕺草(未詩・独白)/プル式
ここにあるのはただのがらくた
偽物で繋ぎ止めた
僕の透明な城
見える奴にしか見えない
はりぼての城
僕はそこでしか呼吸ができない
僕はそこでしか物が見えない
僕はそこでしか声を出せない
僕はそこでやっと笑う事ができる
ここなら飛行機雲に手が届く
何もかもが消える前に手が届く
例えば風に揺れる花の上で夢を見ることも
それを歌声にして動物たちと笑い合うことも
なりたい自分になることも
ある日不意に訪れたのは満たされた人
小鳥とさえずり動物たちと笑い合う
そうして僕に優しく微笑み手を伸べる
柔らかな声でそれぞれに歌い始める
高らかに高らかに歌い始める
そうして僕は城を出る
深く窪み落ちた真っ黒な目と
冬のすきま風の様に耳障りな声がうねっている
僕の城はもう壊れてしまった
風邪を引いた様に敏感になりすぎた皮膚が
僕の痛みを切り裂いて行く
もうじき何も感じなくなるだろう
ここにあるのはただのがらくた
僕を守った柔らかな嘘。
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