傘のない街/
千波 一也
たすける傘は
どこにも
ない
荷を
確かめる老爺の肩に
寄り添う傘は
どこにも
ない
街は
かわらず
暗黙の一方通行だから
にわか雨にも
動じない
流れる方向が乱れたら
街の
弱みが
さらされるから
街は
つとめて
干渉しない
軋む隙間を
あちらこちらに
許すしかなくても
街は
なにも
持たずに
済むように
街ゆく人の一つ一つに
なにか
易しからぬ
言葉を放ち続ける
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