カズコサン/
オイタル
ひそひそと
整列する樹木の影
それから枝先の細さ
並んでゆれるつり革の
ぶら下がるもののない
空のつり革に
うなだれて
立ちのぼる
カズコサン
閉じている窓の
短く手の届くあたりに
鳴り渡るけたたましい金属音
スコップを持つ父
くゆらす煙は行方も知れず
五十のバイクで
霞む朝の空に
弧を描く少年
初夏の慣れない陽気に
滑らかに
浮沈する
カズコサン
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