初夏/壮佑
初夏
少年の頃
お話の木の絵を見た
広葉樹の木陰で
子供達が
眼を輝かせ
耳を傾けている
お婆さんのことば
森や草原を漂い
風に運ばれて
村や町や港や
海や諸国を巡り
世界を織りなす物語
リスに兎に山羊
猫とネズミと子犬
動物達も聞きに来ている
枝先で小鳥が囀り
葉叢の奥には妖精の影
蹄のある足だけ見えるのは
パンフルートを吹く者?
オトギバナシなんかじゃない
大人になってからも
今日みたいな初夏の風が吹いて来たら
耳を澄ませば聞くことができる
樹木の語るお話
初夏
駅に続く歩道には
ヤマモモの樹が並んでいる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(26)